microcosmos  4

日々の思索

本村俊弘の霞ヶ丘日記(15)

2012年5月5日(土)晴れ。
悪戦苦闘の末、何とか詩1編を仕上げました。時間をおくと必ず気に入らない箇所が出てくるので、まだ未完成かもしれません。
体操ロンドンオリンピック代表決定競技会をBS1で観ています。選手たちの緊張感がこちら側にも伝わってきます。5位までの選手が代表に選ばれ、6位だと落選となります。種目ごとに順位が入れ替わる熾烈な戦いとなっています。一つのミスが決定的なものになるために選手の顔には笑顔がありません。今は最終種目の床です。
大阪の62歳の女性が一人で北アルプスの登山をしていて、死亡したというニュースを聞いてびっくりしています。60歳代の女性が一人で2000m級の山に登るということは普通に行われていることなのでしょうか。登山愛好者の現状がどうなっているのかさっぱりわかりません。毎年、遭難事故が相次いでいるのに繰り返し起こるのはどうしてなのでしょう。仕方ないことなのでしょうか。残された家族はどうすればいいのでしょうか。悲しみの中に家族は沈みます。「60歳代の女性がひとりで」という表現自体が時代遅れの陳腐なことなのでしょう。しかしどの時代にあっても、命あってのことではないでしょうか。八王子の高尾山に上って頂上で飲酒をして、酔っ払って岩場から転落してヘリコプターで救助されるという事故が先月でしたかありました。頂上の岩場で酒盛りをするなんて、どう理解すればいいのでしょう。それも人生経験を積んできた中高年なのです。人生経験が生かされていないのが残念です。社会がアナログからデジタルへ移行していく段階から、人間の経験という意味が失われていくように思えてなりません。今の子供たちはデジタル化された社会で育っています。その結果として人生経験という今まで大切にされてきたものは価値が低く観られ、新しいものが一番という物指ししか持ちえないことになりはしないかと恐れます。古くなったものは邪魔扱いにされるようになってくるでしょう。老人は尊重されない時代が到来することになると思います。
今日、もうひとつびっくりしたのがロシアの放送局が伝えていたことでした。ロシアでの飲酒のことでした。ロシアではお酒が原因で毎年約100万人の人が亡くなっているというのです。女性キャスターが100万人の都市が一つ消滅することですと表現していました。映像では男性のみならず若い女性が酔っ払っている姿が映し出されていました。酔っ払い同士による喧嘩、酔っ払った男性が空ビンを自分の頭に打ち続けていました。ロシアでのアルコール依存症の強さはウオッカ並みだと思いました。
去年でしたかびっくりしたニュースに、経済危機をむかえてギリシャの自殺者数が倍になったというのです。倍になったというのでそれは凄いなと思っていたら、倍になった自殺者数が30人でした。中国の年間自殺者数は約30万人、日本は約3万人、この3というからみの数字は何なんでしょうか。統計的な数字がでるのであれば、人間の行動が一見ばらばらな混沌としたものであっても、何がしか読み取れる動きとして理解できるものがあらわれてくるようにも思います。わたしは自殺者が少ないということはいいことだと思っています。経済的に苦しくても生きていれば、灯りが見出せる可能性があります。日本人の死に対する精神化の副産物として自殺があるのではと考えています。わたしは死に対する生という基軸を日本文化の中に据え置く必要性を感じています。総じて問題が発生した時には、現状では生よりも死の方に傾いていくように思います。生きることを、どのように生き延びるかを考える方向になったらいいと思っています。3.11以後特にそう思うようになってきています。震災ショックが自殺を一時的に減らしたのかもしれません。しかし震災後のわたしたちの取り組み次第では、自殺者は逆に増えるのではないかと考えています。自殺する時の原因は複合的になっていて、折り重なって罹災者を苦しみのなかに突き落としていきます。これからが大事になってくると思います。
午後7時10分頃に帰宅。昨日、K市の新刊書店へ行ったのですが、売り切れてなかったので池袋のジュンク堂へ行き「現代詩手帳5月号 吉本隆明追悼総頁特集」(¥2000)を買い求めました。付録として吉本隆明氏の講演した内容が入っているCD1枚があります。吉本氏の父方の祖父が九州天草で、小規模ながら造船所を営む船大工の棟梁であったことに興味を持ちます。職人気質が吉本氏に受け継がれているのではないかと思うからです。造船所の経営に失敗して祖父は家族を連れて上京し、造船所がある月島に住み、船大工として働いていたそうです。そういう事情から吉本氏は大正13年に月島で生まれています。手の感覚、手仕事、大工道具、握力、二の腕の筋肉、野外の仕事、水に浮かぶ船、進水式大漁旗など想像力を育みいい加減な仕事であれば、船は転覆して遭難してしまいます。一寸違わない技術が必要です。アイデンティティーを育む揺り籠となるにはぴったりの船大工の息子だと思います。わたしは造船所が立ち並ぶ長崎市の戸町というところで育ったので、その造船所の情景が原風景となっています。年上ですが漫画家でタレントの蛭子能収さんは同じところで育っています。その蛭子さんも天草の牛深生まれです。天草はどちらかと言えば熊本より長崎と縁のあるところです。







2012年5月6日(日)曇り
午前6時よりBSプレミアムで、「特選オーケストラ・ライブ エッシェンバッハ指揮ウィーンフィルハーモニー」を視聴しています。曲目はリスト作曲のピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調、 シューマン作曲の交響曲 第2番 ハ長調 作品61、ヨハン・シュトラウス作曲の皇帝円舞曲 作品437です。ピアノ演奏は中国人のランランさんです。アンコールでランランさんはリスト作曲の「夢」を弾きました。収録された日は2011年10月13日で、場所は東京のサントリーホールです。指揮者のエッセンバッハさんはもともとピアニストで、若いころはピアニストとして来日してピアノ演奏会を開いていました。現在、指揮者として活躍しているアシュケナージさんと同じようなコースを歩んでいます。アンコールでドビッシー作曲の「小舟」を指揮者のエッセンバッハさんと楽譜を見ながら連弾しています。エッセンバッハさんが右側に座り、楽譜のページをめくっています。貴重な映像だと思います。次にランランさんが右側に座りクリストフ・エッセンバッハさんとドビッシー作曲の小組曲から「バレエ」を弾いています。
午前9時からEテレで日曜美術館を観ました。司会者は作曲家の千住明さんとアナウンサーの森田美由紀さんです。ゲストには女優の坂井真紀さんと東京大学教授のロバート・キャンベルさんでした。今日の特集は 「海を渡った超傑作!〜ボストン美術館 日本美術の名宝〜 」でした。ロバート・キャンベルさんはハーヴァード大学大学院時代によくボストン美術館へ行って日本美術品を鑑賞していたそうです。今回の里帰り展の中にも何点か見たことがある作品もあるそうです。ボストン美術館は創立されてから140年もたっている美術館だそうです。今回里帰りしている作品の中には、国宝級のものが含まれていると番組では説明しています。世界的な日本の名品が何故にアメリカのボストンにあるかと言えば、明治期初期に日本へやってきたアメリカ人二人の名前が挙げられていました。一人はアーネスト・フェノロサ、もう一人は資産家の息子でした。江戸時代の絵師である曽我蕭白(そがしょうはく)のことは今回初めて知りました。ボストン美術館のコレクションからは、約100年ぶりの公開となる「雲龍図」ともう1品。江戸時代の絵師としては伊藤若冲の「鸚鵡図(おうむず)」が出品されています。見事です。国宝級と言われている尾形光琳の「松島図屏風」、鎌倉時代の仏師である快慶の「弥勒菩薩立像」が出品されています。合戦絵巻の最高峰と言われえいる「平治物語絵巻」と遣唐使の活動を表現している大作「吉備大臣入唐絵巻」も出品されています。「吉備大臣入唐絵巻」では、使われている絵具を最新の機器を使って分析しています。それを受けて出光美術館が所蔵している合戦絵巻をボストン美術館が行った同じ方法で科学調査をしました。絵の主役には鉛が入っている絵具を使いそうでない人のところにはカルシュウムの絵具を使っています。二つの調査結果は同じ結果となり、二つの合戦絵巻が同じ作者によるものであることが濃厚となってきました。出光美術館の館長は同じ作者であることは間違いがないと言いきっていました。雪舟以前に平安時代に天才的な絵師がいたことが分かってきました。日本美術史の書き換えが必要となってきました。大きな出来事です。今日の日曜美術館は日本美術史のいい勉強となりました。日本にないことが残念でなりませんでした。
午前11時になりますが埼玉地方は強い風が吹き出してきました。樹木が大きく揺れています。山で遭難者が出なければいいのですが、心配です。気候の変化が激しいように思います。雷鳴が聞こえてきます。