microcosmos  4

日々の思索

本村俊弘の旭町日記(73)

平成15年7月10日(木)― 2003年
   現代詩手帳(1998年9月号)の『特集エズラ・パウンド』を読了。エズラ・パウンドの偉大さが少しずつ分かり始める。特集の中にあったホルへ・ルイス・ボルヘスの言葉が印象に残った。「ウォルター・ペイターははっきり言いました、すべての芸術は音楽の条件を満たす、と。音楽では内容が形式に一体化しています。われわれのように、多少とも喜びを持ってポエジーの練磨に身を捧げてきた者にとっては自明のことですけど、韻文の本質とはその音調にあるのであって、抽象的な意味にあるのではないのです。」(野村喜和夫訳)                        現代詩手帳特集版『吉原幸子』(思潮社刊・2003年3月15日発行・208頁・1600円)を読み始める。                    日本映画専門チャンネル溝口健二監督作品『西鶴一代女』を鑑賞する。1952年制作のモノクロで138分の作品。出演は主役のお春役で田中絹代、他に三船敏郎、菅井一郎、松浦築枝など。感動すべき作品で、お春の悲しみが伝わってくる。御殿女中から夜鷹になるまでの流転するお春の過酷な生が、映画作品として溝口健二のよく練られた演出とカメラアングルで、また田中絹代の見事な演技もあって不朽の名作になっている。後の世に残したい日本映画の一本である。溝口健二監督の作品は全部観たいと、この作品を観て思った。